公開日:2020/08/20 最終更新日:2020/08/20

JVNTA#95473801
トレーラーとトラクターヘッド間の電力線通信ネットワークにおける情報漏えいの脆弱性

概要

SAE J2497 / PLC4TRUCKS に基づく、トレーラーとトラクターヘッド間の通信ネットワークでは、電力線を流れるデータが放射エミッションを介して傍受される可能性があることから、情報漏えいの脆弱性 (CWE-201) が存在します。

影響を受けるシステム

  • トレーラーとトラクターヘッド間との通信に電力線通信を使用し、PLC4TRUCKS などにより実装されているネットワークシステム

詳細情報

トレーラーとトラクターヘッドの間には、アンチロックブレーキシステム (ABS) の誤作動を通知するなどの目的のため、電力線通信の規格 SAE J2497 に基づく PLC4TRUCKS と呼ばれるプロトコルで通信を行うネットワークが実装されています。

この通信内容が近距離から傍受できるとする調査結果が公表されています。
報告者によると、通信を伝達する電力線が送信アンテナの役割を果たすため、トレーラーから約 1.8m から2.4m (6 ft から 8 ft) 離れた場所で電力線からの信号をソフトウェア無線 (SDR) で受信し、通信内容を取得できたとしています。

想定される影響

ある程度の近距離にいる第三者によって、トレーラーで使用されている電力線通信上の通信内容を取得される可能性があります。

対策方法

現在、本脆弱性に対する明確な対策は示されていません。
報告者からは、電力線通信で用いられる回線を短くして低電圧でのデータ送信を行うことで、機器から発生する電磁ノイズ (放射エミッション) を低減するという方法が提案されています。
なお、CISA では、本脆弱性の影響を緩和するために、トレーラーの積載量計測、ABS、テレマティクスで用いる電力線通信ネットワークの機密性を確認することを推奨しています。

ベンダ情報

参考情報

  1. ICS Advisory (ICSA-20-219-01)
    Trailer Power Line Communications
  2. DEF CON Safe Mode ICS Village
    PowerLine Truck Hacking 2TOOLS4PLC4TRUCKS (YouTube)

JPCERT/CCからの補足情報

JPCERT/CCによる脆弱性分析結果

CVSS v3 CVSS:3.0/AV:A/AC:L/PR:N/UI:N/S:U/C:L/I:N/A:N
基本値: 4.3
攻撃元区分(AV) 物理 (P) ローカル (L) 隣接 (A) ネットワーク (N)
攻撃条件の複雑さ(AC) 高 (H) 低 (L)
必要な特権レベル(PR) 高 (H) 低 (L) 不要 (N)
ユーザ関与レベル(UI) 要 (R) 不要 (N)
スコープ(S) 変更なし (U) 変更あり (C)
機密性への影響(C) なし (N) 低 (L) 高 (H)
完全性への影響(I) なし (N) 低 (L) 高 (H)
可用性への影響(A) なし (N) 低 (L) 高 (H)

謝辞

関連文書

JPCERT 緊急報告
JPCERT REPORT
CERT Advisory
CPNI Advisory
TRnotes
CVE CVE-2020-14514
JVN iPedia